国内で使われている睡眠薬の種類とは!?
「睡眠薬を使うのは怖い・・・」
「睡眠薬には抵抗がある・・・」
睡眠薬に対してあまり良いイメージを持っていない人も大勢いるのではないでしょうか?
確かに睡眠薬は不眠症の最終手段とも言える治療法ですが、眠れないからといって安易に睡眠薬に頼るのはお勧めできません。
睡眠薬には副作用や依存性があり、使い方によっては逆に不眠が悪化するという場合もあります。
どうしても眠れないという場合は睡眠薬の服用を考えても良いかもしれませんが、その場合はきちんと用法や用量を守って服用するようにしましょう。
また、ドラッグストア等で気軽に購入できることから市販の"睡眠改善薬"を使用している人もいるかもしれませんが、"市販の睡眠薬は不眠症の人には使えない"ということを覚えておかなければなりません。
睡眠薬と間違って使用してしまう人もいるようですが、作用機序も全く異なるため不眠症の人は市販の睡眠薬は使用してはいけません。
不眠症の場合は、医師の診断を受けてから睡眠薬を処方してもらう必要があります。
そのためにも、睡眠薬にはどんな種類があるのか知っておきたいですよね。
そこで、現在国内で販売されている睡眠薬をご紹介したいと思います。
なお、このページで紹介するのは病院で処方される睡眠薬のみで、市販の"睡眠改善薬"は含みません。
睡眠薬の種類
睡眠薬には大きく分けて「バルビツール系」、「非バルビツール系」、「ベンゾジアゼピン系」、「非ベンゾジアゼピン系」、「メラトニン受容体作動薬」、「オレキシン受容体拮抗薬」の6種類があり、これらは作用機序(薬の効き方)によって分類されています。
現在一般的に使用されているのはベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の2種類であり、バルビツール系と非バルビツール系はほとんど使われることはありません。
なお、比較的新しい薬であるメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬については後述したいと思いますので、まずはベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬についてご紹介します。
バルビツール系の睡眠薬が使われなくなった理由は!?
バルビツール系の睡眠薬が使われなくなったのは、脳幹部の間脳の下にある延髄を抑制することで「呼吸抑制」という重大な副作用を引き起こす可能性が高いというのが一番の理由です。
少量でも致死量に達し、医師が処方する量よりも少しでも多く服用してしまうと呼吸抑制によって死亡してしまうことがあり、一般的な睡眠薬として使用するには非常に危険なのです。
ちなみに、自殺をするときに睡眠薬を飲むという印象が根付いたのもこのバルビツール系の睡眠薬の名残であり、実際に芥川龍之介や太宰治等の有名作家が自殺に使用したことでも知られています。
また、バルビツール系の睡眠薬には非常に強い依存性もあり、医師にとって処方したくない薬なのです。
しかし、このような簡単に死に至る可能性のある睡眠薬が1960年以前までは当たり前のように使われていのも事実です。
余談ですが、睡眠薬で眠るように死ねると思っている人もいるかもしれませんが、バルビツール系の薬は呼吸が出来なくなるため非常に苦しい思いをすることになるのでやめておきましょう。
また、現在一般的に処方されている睡眠薬は大量服用しても死に至るようなことはない安全な薬と言われているので自殺には向きません。
いずれにしても、現在主に使用されているのは睡眠中枢だけに作用して眠気を起こさせる"ベンゾジアゼピン系"と"非ベンゾジアゼピン系"という比較的安全な睡眠薬で、副作用もバルビツール系と比べると少ないのが特徴です。
ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は血中半減期から「超短時間作用型」、「短時間作用型」、「中間作用型」、「長時間作用型」の4種類に分類されます。
勘違いしている人もいますが、半減期というのは薬を飲んでからどれくらいの時間で血中濃度が半減するかを示した時間のことであり、薬が全て消失しているわけではありません。
通常、服用した薬は肝臓で代謝され尿や便と一緒に全て排出されるのですが、半減期は全てなくなるわけではなく半分だけ薬の成分が消失するというもので、半減期が短いほど薬の作用時間が短く、半減期が長いほど薬の作用時間も長くなるということです。
そして、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、血中半減期が6時間未満のものが「超短時間作用型」、6時間〜12時間のものが「超短時間作用型」、12時間〜24時間のものが「中間作用型」、24時間以上が「長時間作用型」と分けられています。
代表的なベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には以下のようなものがあります。
非ベンゾジアゼピン系
作用型 | 一般名 | 商品名 | 半減期(時間) |
---|---|---|---|
超短時間作用型 | ゾルピデム | マイスリー | 2 |
超短時間作用型 | ゾピクロン | アモバン | 4 |
超短時間作用型 | エスゾピクロン | ルネスタ | 5〜6 |
ベンゾジアゼピン系
作用型 | 一般名 | 商品名 | 半減期(時間) |
---|---|---|---|
超短時間作用型 | トリアゾラム | ハルシオン | 2〜4 |
短時間作用型 | エチゾラム | デパス、エチカーム | 6 |
短時間作用型 | ブロチゾラム | レンドルミン、グッドミン | 7 |
短時間作用型 | リルマザホン | リスミー | 10 |
短時間作用型 | ロルメタゼパム | エバミール、ロラメット | 10 |
中間作用型 | ニメタゼパム | エリミン | 21 |
中間作用型 | フルニトラゼパム | サイレース、ロヒプノール | 24 |
中間作用型 | エスタゾラム | ユーロジン | 24 |
中間作用型 | ニトラゼパム | ネルボン、ベンザリン | 28 |
長時間作用型 | クアゼパム | ドラール | 36 |
長時間作用型 | フルラゼパム | ダルメート、ベノジール、インスミン | 65 |
長時間作用型 | ハロキサゾラム | ソメリン | 85 |
>>睡眠薬に頼らないぐっすり眠る方法とは!?おすすめの睡眠サプリ特集<<
睡眠薬の選び方
一般的に睡眠薬は不眠症の症状によってそれぞれのタイプに合った作用時間の薬が処方されます。
例えば、入眠障害には超短時間作用型か短時間作用型の睡眠薬、中途覚醒には短時間作用型か中間型、早朝覚醒には長時間作用型の睡眠薬が使われることがあります。
また、高齢者は代謝が悪くなっていることから副作用が出やすいということもあり、超短時間作用型や短時間作用型の睡眠薬が使用されることが多いのですが、不眠症にタイプによっては長時間作用型が使用されることもあったりと、その人に合った睡眠薬を使用する必要があります。
そのため、高齢者に限らず睡眠薬は自己判断で服用せずに医師に相談して服用しましょう。
作用型による効果の違い
作用型 | 効果 |
---|---|
超短時間作用型 | 効果は早く現れますが、作用する時間が短いため寝つきの悪い入眠障害の不眠症に使用されます。作用時間は4時間前後で、持ち越し効果も少なく現在最も多く使用されているのが超短時間作用型の薬です。 |
短時間作用型 | 効果は比較的早く現れ、作用時間も5時間〜10時間と短いのが特徴です。入眠障害や中途覚醒の不眠症に使用されることが多いタイプです。持ち越し効果の副作用も少ないと言われています。 |
中間作用型 | 作用時間が20時間程度と比較的長いため、早朝覚醒の不眠症に使用されます。効果が長く持続することから持ち越し効果により、翌日の眠気や倦怠感を引き起こすことがあります。 |
長時間作用型 | 24時間以上も作用が持続するため早朝覚醒に使用されますが、昼間は抗不安薬としての作用もあるためうつ病や統合失調症の人にも使用されます。持ち越し効果が現れることが多いので、注意が必要です。 |
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の特徴
それでは、現在主流であるベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の特徴についてご紹介します。
ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬にはそれぞれ異なる特徴がありますが、いずれもベンゾジアゼピン受容体を活性化することで眠気を促すというのは同じです。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は化学構造が異なり、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は催眠作用に関連するベンゾジアゼピン受容体(ω1受容体)と抗不安作用や筋弛緩作用に関連するω2受容体に作用するのに対して、非ベンゾジアゼピン系はω1受容体のみに作用するため、より副作用が少ないのが特徴です。
ベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はベンゾジアゼピンと反応することで中枢神経系の抑制神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)の受容体に作用し、神経の興奮が抑えられて精神を安定させたり眠気をもたらします。
GABAは抑制性神経伝達物質としての働きがあり、GABAの作用が高まることで覚醒を抑え、不安を和らげたり睡眠を促す作用があります。
GABAといえば抗ストレス作用があることで知られていますが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬にはGABAの作用を強める働きがあり、不安感が強い人や緊張の強い不眠症の人に有効だと言われています。
ただし、GABAは認知機能や記憶を司っている大脳皮質にも存在しており、GABAの作用を高める作用が翌日まで残ってしまうと記憶力の低下や運動機能の低下がみられることもあるので注意が必要です。
また、長期間服用を継続すると非ベンゾジアゼピン系よりも依存性が強くなるのも特徴です。
非ベンゾジアゼピン系
非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン系とは異なる構造式を持っていますが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と同じでGABAの受容体に作用して眠気を催す作用があります。
非ベンゾジアゼピン系はふらつきや転倒の原因となる筋弛緩作用に関連するω(オメガ)2受容体への作用が弱いことから副作用が少ないと言われており、より自然な眠りを誘発するのが特徴です。
また、非ベンゾジアゼピン系の睡眠には深い眠りであるレム睡眠(徐波睡眠)を増加させる作用もあることから、レム睡眠が減少する高齢者に対しても睡眠の質が良くなると言われており、欧米ではベンゾジアゼピン系よりも多く使用されています。
なお、いくら安全といっても副作用が全くないわけではないので可能な限り長期投与は避けるようにしましょう。
新しいタイプの睡眠薬
薬というものは日々新しいものが開発されており、より安全で効果的な薬が販売されることがあります。
睡眠薬も同じで、2010年以降に2つの新しいタイプの睡眠薬が登場しました。
それが、「メラトニン受容体作動薬」と「オレオキシン受容体拮抗薬」です。
メラトニン受容体作動薬
従来はベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が主流でしたが、睡眠のリズムを整えることは出来ませんでした。
そこで体内時計を整えて睡眠のリズムを整える作用のある新しいタイプの睡眠薬のメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)が2010年に厚生労働省に承認されました。
ラメルテオンは睡眠誘発に関与する視交叉上核のメラトニン受容体1型と概日リズム位相を変異させるメラトニン受容体2型に作用して自然な睡眠を誘発させるという作用の薬です。
ラメルテオンの特徴はベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは違い、副作用がより少なく依存性もないところです。
武田薬品から「ロゼレム」という商品名で販売されています。
オレオキシン受容体拮抗薬
オレオキシン受容体拮抗薬はメラトニン受容体作動薬よりも新しいタイプの睡眠薬で、オレキシンという視床下部のニューロンから産生される覚醒物質の過剰な働きを抑えることで眠りを誘うという作用があります。
強制的に眠らせるというよりは、本来の睡眠を取り戻すという感じでしょうか。
また、作用時間はメラトニン受容体作動薬よりは長く、メラトニン受容体作動薬と同様に副作用が比較的少ないのが特徴です。
ただし、高齢者には「慎重に投与すること」とされているので、高齢者が服用する場合は注意が必要です。
MSDより「ベルソムラ」という商品名で販売されています。
睡眠薬は飲んでからどれくらいで効くの?
睡眠薬を服用したら30分以内に床に就くようにしましょう。
人によって異なりますが、睡眠薬は服用後10分〜30分くらの間に効果が現れ始めます。
一般的に若い人は薬が効きやすく消失も早いのですが、高齢者は薬が効きにくく消失するのも遅いと言われています。
例え眠くなかったとしても、睡眠薬を飲んだらすぐに眠りに付けるようにあらかじめ睡眠の準備を整えておきましょう。
せっかく睡眠薬を飲んでも、最も効果が現れている時間帯を逃してしまうと眠れなくなってしまいかねません。
また、食後すぐは吸収が悪くなるので、なるべく空腹時に服用するようにしましょう。
もちろんスマホやテレビの画面を見たり、興奮するようなことをするのも厳禁です。
リラックスした状態を保つようにしましょう。
睡眠薬とお酒の併用は厳禁!
「睡眠薬を飲んでから寝酒をしても良いのか?」
と疑問をお持ちの人はいないでしょうか?
中には睡眠薬代わりにお酒を飲んでいる人も少なくはないでしょう。
アルコールと睡眠薬は脳の同じ場所に作用すると言われており、睡眠薬の作用を増強させてしまうことから併用はしないようにしてください。
「お酒を飲んだ方が寝つきがよくなって、睡眠薬と併せて飲めばもっと眠れるようになる」
というのは全くの間違いで、アルコールを飲むと中途覚醒しやすくなるだけでなく副作用が発生しやすくなります。
どうしてもアルコールが飲みたいという人は、眠りにつく3時間くらい前までに適度な量を飲んでおくようにしましょう。
なお、アルコールは睡眠の質を悪化させるので、睡眠薬を服用していてもしていなくても寝酒はしないことをお勧めします。
睡眠薬と併用してはいけないもの
お酒以外にも睡眠薬と併用しない方が良いものはいくつあります。
まず、他の薬との併用ですが特に高齢者は血圧の薬など、様々な薬を服用している人が多いと思いますので、もし他の薬を服用している場合は医師に相談して併用しても良いか確認するようにしましょう。
また、コーヒー、紅茶、チョコレート等のカフェインを含む食品も脳を覚醒させてしまう作用があるので、併用はしないようにしましょう。
最後に
睡眠薬の服用は正しく使えば睡眠の強い味方になりますが、場合によっては不眠の悪化や重大な副作用を引き起こすものでもあります。
「どうしても眠れなくて苦しい」
というときは睡眠薬に頼ることも1つの方法ですが、可能な限り自力で眠れるように生活や体質を改善するようにしましょう。
睡眠薬は"眠れる魔法の薬"ではないということを念頭においておきましょう。