レム睡眠とノンレム睡眠で心も体も健康に!
睡眠中には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2種類の波が存在していることはおそらくほとんどの人が知っていることだと思いますが、この2種類の波がそれぞれどのような働きをしていて、睡眠においてどれくらい重要であるかを理解している人はほとんどいないのではないでしょうか?
レム睡眠とノンレム睡眠はそれぞれ異なる役割を果たしており、どちらも健康を維持するだけではなく生きていく上ではとても重要なものなのです。
睡眠中には誰でも必ずこの2つの波が交互に現れ、どちらかが多くても少なくて健康には良くはありません。
また、快眠を得るためにはこの2つが非常に重要になってきますので、是非覚えておいてください。
それでは、それぞれの睡眠の違いを見ていきましょう。
レム睡眠は浅くて夢を見る睡眠
レム睡眠は1953年にアメリカ人のアセリンスキーとクレイトマンにより発見されたものです。
ちなみにレム(REM)とは"Rapid Eye Movement"の略で日本語で言うと"急速眼球運動"という意味になります。
文字通りレム睡眠のときはまぶたの下で眼球が急速に動いているのです。
それでは具体的にどのような種類の睡眠であるかというと、簡単に言ってしまうと"脳が起きているけど体は休息している"状態になります。
つまり、脳は動いていても体は動かずに休んでいる状態です。
そして、私たちが睡眠中に夢を見ているときも、レム睡眠のときなのです。
(最近ではノンレム睡眠のときも夢を見ていると言われています。)
ところで、夢を見ているときに
「夢の中で走ったり激しい動きをしているのに実際には体が動いていないのは何故?」
と疑問を持ったことはありませんか?
それは、夢を見ているときに体が動いて怪我をしないように、レム睡眠のときには首から下の筋肉が弛緩して体が動かないようにスイッチが切り替わっているからなのです。
普通の人はこのスイッチが切り替わっているので、睡眠中にケガをすることはありません。
しかし、中にはこのスイッチの切り替えが出来ず、夢を見ているときに脳だけでなく身体も一緒に動いてしまう人がいます。
例えば、寝ている時に起き上がって壁にぶつかったり、家具を壊してしまったり、隣で寝ている人を殴ってしまったりということが実際にあるのです。
このような状態を「レム睡眠行動障害」と呼び、症状が軽い場合は寝言や手足を動かす程度ですが、症状が悪化してくると上記のような行動を起こしてしまうこともあります。
ちなみに睡眠中に無意識のうちに歩き回ったりする症状である"夢遊病"と似ていますが異なる病態です。
レム睡眠行動障害は50歳以上の男性に良く見られる症状で、頻度も人によって異なります。
一般的に治療が必要な場合は、クロナゼパムを用いた薬物治療が行われます。
金縛りに合うの心霊現象じゃない
また、睡眠中に"金縛り"に合ったことがある人もいると思いますが、金縛りになるのもレム睡眠のときなのです。
金縛りはレム睡眠で夢を見ているときに、何らかのきっかけで"急に覚醒"するとまだ首から下のスイッチが入っていない状態なので"起きているのに動けない"という状態になってしまいます。
しばらく経ってスイッチが切り替わると体が動くようになります。
本来睡眠はノンレム睡眠から入るのが普通なのですが、睡眠のリズムが乱れているときにはいきなりレム睡眠から入ってしまうことがあり、そのときに金縛りになりやすいと言われています。
「金縛りになるのは体を幽霊に押さえつけられているからだ」と思っている人もいますが、金縛りの原因は心霊現象ではなく、レム睡眠によるものであると科学的に解明されているのです。
決して幽霊に憑りつかれているわけではないので安心してください。
夢を夢だと認識出来ないのは何故!?
また、夢をみたときにこのような疑問を持ったことはないでしょうか?
「何故どう考えてもあり得ないことが起こっているのに、夢だと気付かないんだろう・・・」
また、誰もが一度は
「夢を夢だと気付けたら好きな夢が見れて楽しいのに」
と思ったことがありますよね。
夢の中なら好きな人に告白されたり、ヒーローになれたり、空を飛べたりと現実では不可能なことも実現させることが出来ます。
しかし、残念ながら私たちの脳は夢を夢と認識することは出来ないようになっているのです。
レム睡眠のときに見ている夢は楽しいことや怖いことなど、感情が激しくなる夢を見ることが多いと言われています。
これはレム睡眠中には情動を司る脳幹や大脳辺縁系の海馬、偏桃体等が活性化しているからなのです。
ところが、認知や思考を司る前頭葉の機能は低下しているため、夢の内容がおかしくてもそれがおかしいと判断することが出来なくなっているのです。
また、朝目覚めたときに夢の内容を覚えていないことがあると思いますが、それはレム睡眠ではなく深い眠りについているノンレム睡眠のときに目覚めているからだと言われています。
夢を見ていないと思っている人も、覚えていないだけで実は寝ている間は誰でも夢を見ているのです。
ちなみに夢を見るのはレム睡眠のときだけだと思われがちですが、ノンレム睡眠のときも夢を見ていることが分かっています。
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ノンレム睡眠とは!?
次にノンレム睡眠ですが、ノンレム睡眠は"脳(大脳皮質)を休めるための睡眠"で、レム睡眠とは異なり眼球が動いていない状態です。
ノンレム睡眠のときは大脳も身体も活動を低下させてリラックスした状態になっているので、このときに疲労回復をしていると考えられています。
また、ノンレム睡眠は深い眠りだと思われがちですが、ノンレム睡眠の中でも"浅いノンレム睡眠"と"深いノンレム睡眠"が存在しており、眠りの深さによってステージ1〜4までの4段階に分けられています。
ステージ1と2が浅い睡眠で、ステージ3と4が「徐波睡眠」と呼ばれる脳波の波形が大きく、ゆっくり動く状態になっています。
ちなみに、この徐波睡眠のときに「成長ホルモン」がたくさん分泌されています。
ノンレム睡眠は新しい睡眠!?
ところで、レム睡眠が「古いタイプの睡眠」であるのに対して、ノンレム睡眠は「新しいタイプの睡眠」であると考えられていることをご存知でしょうか?
レム睡眠が"脳は働いているのに体が休んでいる状態"になっているのは、体を休めながらも外敵から身の危険があったときに脳を機能させておくことで対応しやすくなるという原始的な睡眠の形であると考えられています。
そして、昔の動物は大脳が発達しておらず、脳を休ませる必要がなかったのでレム睡眠だけで良かったのです。
しかし、進化の過程で大脳皮質が発達してくるにつれて脳を休ませる必要が出てきました。
脳は非常に多くのエネルギーを使うので、脳が発達すればするほどより多くの時間を使って脳の活動を低下させなければならないのです。
そこで脳を休ませるために生まれたのがノンレム睡眠なのです。
特に人は大脳皮質が他の動物よりも発達しているのでより多くのノンレム睡眠が必要であり、人間のノンレム睡眠の時間は他の動物よりも多いのが特徴です。
ノンレム睡眠とレム睡眠は交互に起こる
レム睡眠とノンレム睡眠は同じ睡眠でも全く異なる性質を持っており、単に睡眠が浅い、深いというだけではないということはご理解いただけたでしょうか?
さて、レム睡眠とノンレム睡眠の役割については理解いただけたかと思いますが、それぞれどのようなときに現れるのでしょうか?
その前に先ほども少し触れましたが、ノンレム睡眠にはステージ1からステージ4までの4段階があり、睡眠は全部でレム睡眠とステージ1から4までのノンレム睡眠に分類されています。
ステージ1,2が浅い眠りで、ステージ3,4が深い眠り(熟睡状態)であるとされています。
それでは、レム睡眠とノンレム睡眠はどのように現れるのでしょうか?
人間の場合、入眠するとまずは浅いノンレム睡眠が現れ始め、次第に深いノンレム睡眠の状態へと移行していきます。
そして、再び浅いノンレム睡眠に移り、入眠してから1〜2時間後くらいにレム睡眠が現れます。
この一連の周期を"睡眠周期"と呼んでいます。
6〜7時間くらいの睡眠をとっている人なら、睡眠周期が寝てから起きるまでに3回〜5回程度繰り返されているのです。
睡眠周期の時間は!?
睡眠周期は平均すると1回90分くらいだと言われていますが睡眠周期には個人差があり、人によっても長さが異なり70分の人もいれば、110分周期の人もいるのです。
さらに、同じ人でも毎回同じ周期というわけではなく、その時の体調によっても変わることがあります。
また、睡眠周期の波は常に一定ではなく、ステージ4の深い眠りは最初の3時間までに現れるのが特徴で、後半になると浅いノンレム睡眠やレム睡眠が増えてきます。
私たちの体はレム睡眠とノンレム睡眠の睡眠周期が繰り返されることによって、肉体的な疲労も精神的な疲労も回復させることが出来ているのです。
ついつい深い眠りであるノンレム睡眠だけをとった方が良いのではないかと思いがちですが、大切なのはノンレム睡眠とレム睡眠の睡眠周期を一晩の眠りで繰り返すことです。
質の高い眠りというはどちらかに偏るのではなく、この2つが規則的に繰り返される眠りだということを覚えておきましょう。
高齢者はノンレム睡眠が短い
レム睡眠とノンレム睡眠の周期は若い人と高齢者でも異なり、子供や若い人の方がステージ3と4の深い眠りの感覚が長く、高齢者になるとその感覚が短くなります。
高齢者の眠りが浅く、夜中に目が覚めやすいのもそのことが影響しているのもひとつの理由だと考えられています。
記憶を定着させるのはレム睡眠
レム睡眠のときは「記憶や情報の整理」を行っていることが知られています。
脳の記憶を司る部位には"海馬"と"大脳"があるのですがそれぞれ特徴があり、海馬は短期記憶を司るものなので覚えるのは早いのですが、忘れるもの早いという特徴があります。
それとは反対に、大脳は覚えるのは遅いのですが、一度覚えたことは忘れづらいという特徴があります。
レム睡眠で海馬から大脳に変換させる
日中に覚えたことや学習したことは海馬が記憶しているのですが、海馬に記憶していてもすぐに忘れてしまうので、忘れないようにするためには覚えた記憶を大脳に変換する必要があります。
そこでこの作業を行っているのがレム睡眠なのです。
レム睡眠の時は記憶を司る海馬が活性化し、日中に記憶した情報を"必要なものと不要な物に整理"し、必要な物だけを大脳に移し短期記憶から長期記憶へと変換しているのです。
また、赤ちゃんの睡眠の半分以上はレム睡眠ですが、これは覚えることがたくさんあるからであり、同時に脳や神経が育てられていると考えられています。
つまり、覚えたことをしっかりと記憶として定着させるにはレム睡眠が必要不可欠なのです。
昔から「寝る子は育つ」と言われていますが、睡眠をとると体だけでなく脳内も育つということです。
子供の受験勉強や、資格の勉強、英語学習等も寝る間を惜しんで勉強をするのではなく、しっかりと睡眠をとって覚えたことを頭に焼き付けるのが最も効率よく学習できる方法であると言えるのではないでしょうか?
また、ストレスを処理しているのもレム睡眠で、レム睡眠が少なくなればストレスが溜まりやすくなり不眠症やうつ病にもなりかねません。
睡眠時間が減るとレム睡眠の時間が減る
レム睡眠が全睡眠に占める割合は約20%程度で、その他はノンレム睡眠であると言われています。
また、先ほどもお伝えしたとおり、理想の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠が4回〜5回繰り返される睡眠です。
そのためには7時間前後は睡眠をとる必要があるのですが、それでは睡眠時間が短くなるとどうなるのでしょうか?
実は睡眠時間が減少すると、ノンレム睡眠を優先する仕組みになっているためレム睡眠の時間が少なくなるのです。
レム睡眠が少なくなるということは、睡眠の質が悪くなり日中の眠気が強くなったり記憶力の低下にもつながります。
特に育ち盛りの子供にとってはレム睡眠は非常に重要になってきます。
もちろん大人にとっても睡眠不足は様々な悪影響を及してしまうので、良質な睡眠をとるようにしましょう。